学術たん、勉強会をひらく。

学術たんが世界のどこかで行っている、勉強会の様子をちょっとだけご紹介します!

第3回 久しぶりの「学術たん勉強会」です!

はじめに

2018年2月、前回から実に2年ぶりの学術たん勉強会が都内某所で開催されました!!

今回の主催は政経たん

そして登壇者には政治学たんマーケティングさん美術たん古典たんという計4名の学術たんが集まりました!!

 

ということで、今回も当日発表された内容をコンパクトにまとめて記事にしてみました。気になる学術たんの発表へ一気に飛べる「目次」付きです!

 

とても1ツイートじゃ収まりきらない!そんな学術たん達の発表を是非お楽しみください!

 

 

 

政治学たん|分類という哲学 ―既存のルールを排して学問・学術を再分類してみよう―

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専門分野を勉強・研究することは、物事に対する特定の見方を訓練すること。

つまり自分の専門分野ばかりにこだわり過ぎると、どんどん視野が狭くなってしまう可能性があります。そのため自分の専門分野を学ぶ一方で、他の分野についても「物の見方・概論を知る」くらいには学んでみることが重要であると政治学たんは述べます。

 

そこで今回はそのきっかけ作りとして、参加メンバーがそれぞれ過去に学んだ科目の名前を全てカードに書き出し、それらを川喜田二郎氏の考案した「KJ法」をベースにしながら「ちょっと変わったルール」での分類・グループ化を行ってみました。

そのルールとは以下の2つの分類法を禁止すること!

1 〇〇語 ××入門 △△演習など、大学の科目システム・シラバスで採用される分類法

2 日本十進分類法(こちらが一般的な学問分類法に該当する)

例えば、「フランス語や中国語は『語学系』で」といった分類を今回してはいけません!

しかしこの縛りを追加することで、何か新しい発見が出来るかも知れません。

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…ですが、分類作業は思ったよりも難航。

いかに我々が上記2つの分類法に「支配されているか」を思い知らされました。

 

そして散々悩んだ末に「科目名の文字数で分類してみてはどうか」というアイデアがふと出ました。早速文字数で分類してみると…。

二文字のものは哲学、文学、数学、民法など。

三文字は政治学社会学、心理学など。

文字数が少ないものほど明治以来の古き良き科目名が並ぶことが分かります!

そして四文字を超えると社会思想などやや専門・各論化。

六文字を超えてくると入門や概論、演習といった言葉が後ろにつきやすくなります。

全体的な傾向として、科目名が長くなると「一般・概論から専門・各論へ」また「伝統的なものからチャレンジングものへ」という大きなベクトルを見出すことができました。

 

そしてさらに「科目名が長いほど“ゆるふわ”な授業が多くない?」という指摘も。

確かにカタカナやひらがなを多く含んでいたり、考えてみれば不必要かもしれないキーワードが混じっているなど、極端に長い科目名は明らかにゆるふわな雰囲気をまとわせています。

そして、その科目を受けた人たちの話を聞いてみることでそれらを「中身もゆるふわ(楽単)だった」「実は本格的だった」という2タイプにさらに分類することもできました。

 

分類し名前を与えることはカオスに秩序を与え認識をもたらす有効な方法です。

つまり私たちは日常生活において既存の分類法を無条件に採用することで、物事の認知に費やすエネルギーや時間を節約できているのです。

しかしその分類によって削ぎ落され見えなくなる部分も同時に出てきます

そこで敢えて既存の分類法を禁止してみることで、私たちはカオスに頭を悩ませることになりますが、そこから新しくまた有益な発見が出来るかもしれないのです。

 

とにかく、特定の学問・学術に特化してきた「学術たん」がいかに自らの専門分野に縛られていたか…大いに気付かされた貴重な経験でした。

 

 

マーケティングさん|大物YouTuber炎上するも損をせず生き続ける

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マーケティングさんは、現代社会ですっかりお馴染みになってしまった事象「炎上(うち主に個人が起こすもの)」について発表を行いました。その主題はズバリ「炎上が起きても、別に当事者は損をしないのでは」というもの。

 

そうはいっても不倫騒動で芸能界から追いやられかけた女性タレントや、暴言問題で国民に見限られた政治家、後輩に暴行し角界から姿を消した元横綱など、炎上によって人生を狂わされた人たちは確かに存在します。

 

しかしその一方で、個人レベルで大きく炎上したにも関わらず、結果的に大して手痛いダメージを負わなかった人たちもいます。

 

その好例が「YouTuber」です。

例えば人気YouTuberの「はじめしゃちょー」氏は、2017年3月に女性YouTuberや一般女性と三股を掛けていたことが発覚し炎上。さらに同月のうちにゴルフグラブを折る動画を投稿し、そのメーカーが公式Twitterで苦言を呈したことで再び炎上を起こしてしまいました。

また「ヒカル」氏というYouTuberも、2017年8月に「VALU」というサービスを利用して、自身のフォロワーに株行の購入を煽り、一斉に株式が買われ売値が高騰したところで、一気に売却し利益を得たことで「詐欺疑惑」がかかり炎上をひき起こしました。それを受け翌月には無期限の活動休止を宣言したものの、2か月後にはあっさり復帰し現在も活動を続けています。

 

さてこの2人のYouTuberについて月毎の「チャンネル登録者純増減数」を見てみると面白いことが分かります。

確かに彼らが炎上した翌月にはその数が激減し、ヒカル氏に至ってはマイナスの数値を記録していることが分かります。しかしなんと、翌月以降になると徐々にその数値は回復傾向を見せてきているのです。つまり炎上を経験してもなお、彼らの動画は見られ続け、ファンもつき、彼らは継続して収益を得ていることになるのです。

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なぜ、YouTuberは炎上により手痛いダメージを負わなかったのか。

考えられる理由として、炎上の持つ特性があります。

まず「非好意的な口コミは、好意的な口コミの2倍以上のスピードで伝播する」グッドマンの第二法則というものがあります。すなわち炎上は「良い口コミ」よりも拡散力が高いため、結果2人の知名度を格段に上昇させたのです。炎上により初めてその存在を知り、ファンにはならないまでも興味本位で動画を視聴した人が当時多く居たのではないでしょうか。

そして炎上は結局一時的なもので、炎上に加担していた人が飽きたり別の話題で盛り上がるようになれば、世間はその炎上騒動のことは忘れ、ファンだけが残る状態に落ち着きます。

つまり、炎上が起きても「心折れずに活動を続ければ」状況は意外にも簡単に改善するのです。

 

ですが、芸能人やスポーツ選手・政治家は残念ながらYouTuberのようにはなかなかなれません。

なぜなら彼らは、自分の活動や進退を、事務所や団体・国民などの第三者に握られているからです。その一方で、独立性の高いタレントやネットアイドルであれば、炎上による被害を比較的受けず、場合によって炎上を利用することだってできます。

 

そもそもネットという環境は目立ってなんぼの“超”競争市場です。

YouTubeに限らず、どこかの生放送で過激な配信者が増えるのは、炎上でも起こさないと見向きもされないからです。

この問題に対しては、正直なところ動画サイトやSNSの運営側が炎上目的の行動をユーザーに起こさせないためのルールおよびシステム作りをする他に解決策はないと思われます。

最近では樹海で遺体を撮影した外国人YouTuberが炎上したことで、YouTube側も新規制を発表するなどの対応を見せています。

果たして「炎上」が死語になる未来はくるのか?今後の展開を静観していきましょう。

 

 

美術たん|味わうほどに深い!「象徴主義」の作品を鑑賞してみよう

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三人目の登壇者は美術たん!

今回、美術たんは19世紀後半に興った芸術思潮「象徴主義」について解説。

また関連する絵画や詩を鑑賞し、参加者に感想を書いてもらうというワークショップも行いました。

 

美術たん曰く「象徴主義」は、「写実から抽象的絵画へ」という発展的美術史観から外れたところにある、いわゆる歴史の闇にうずめられてしまった芸術思潮であるとのこと。しかし、そこには蠱惑的な独自の魅力があるそうです。

 

象徴主義の基本的なコンセプトは「現実の写実的な描写ではなく、人間の内的な世界を何らかの象徴的なイメージで表現しよう」というもの。

「真実の世界とは、目には見えない現実の向こう側あるいは裏側に、すなわち人間の内面にこそある」という考えのもと、象徴主義の画家たちは自身の心を深く掘り下げ、また聖書や有名な作家による文学などの世界観を盛り込みながら、「人間の内的な世界」を描いてきました。

 

発表の中で、ボードレールの象徴派の詩を、参加していた学術たん全員が順番に音読していくという、印象的な場面がありました。そうした詩の音読が今回の美術たんの発表に取り入れられた理由は、「象徴派の詩は、読み手の脳内に喚起されるビジュアル的なイマジネーションを重視しているから」なのだそうです。象徴派の画家もまた詩人のように、目には見えないけれど脳裏に見える、想像力を重んじていたのです。

 

今回美術たんがメインに紹介した象徴主義の画家が、「オディロン・ルドン」と「ギュスターヴ・モロー」です。

 

ルドンは「眼は奇妙な気球のように無限に向かう」「不思議な花(子供の顔をした花)」など、主にモノクロで人の頭部のパーツをモチーフとして組み込んだ作風でよく知られています。

当時色彩豊かに風景や人々の生活を写実的に描いていた印象派の画家が多い中、ルドンは自身の心・過去・無意識の世界を追求し絵画を描き続けました。

 

またモローは「オイディプススフィンクス」「出現」など神話や聖書を基にした作品を多く描いています。しかしそこには当時の世相も反映した「女と男の心情」や「生と死」など何らかのテーマを感じさせる描写が多く含まれており、神秘的でありながらかつ深い精神性も持ち合わせる作風が当時高く評価されていました。

 

今回行ったワークショップにおいても「鑑賞した絵画や詩から皆さんがどんなことを感じとるか」という、見たままの説明やキレイな模範解答などではなくそれぞれの抱く素直な所感を美術たんは重視していました。当然学術たんによって得意・不得意が出ていましたよ!

ですがこうした美術鑑賞をしてみることで、実は私たちに「すぐ正解を求めようとする」「事実ばかりに気を取られてしまう」というようなクセがついてしまっていることに気付かされます。

そんな時は美術館に行って「まずは解説を見ずに作品をじっくり鑑賞」してみるといいのかもしれませんね!

 

 

古典たん|激闘!古典たん杯~春の徴(しるし) & 折句編~

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最後の登壇者は古典たんです!

この時間では他の参加者の学術たんが、一定のルールの上で和歌を詠み、匿名での人気投票により最優秀作を決めるという「古典たん杯」が開催されました。

 

第一戦目は清少納言の『枕草子』のある一節から出題。

2月末のまだ雪が少し降っている日に、藤原公任から「すこし春あるここちこそすれ(春が来ている心地がするよ)」というメッセージが届きます。これは「この七七に上の句を付けろ」という意味であり、それに困惑する清少納言でしたが「空寒み花にまがへて散る雪に(空寒く花に見まがう雪を見て)」という上の句を返したというお話があります。

まずはそれにちなんで、少し現代テイストに言い換えた「少し春めくそんな気がする」という下の句に適する上の句を付けるというルールで和歌を詠み合いました。

政治学たんとマーケティングさんがネタに走る中、見事美術たんの詠んだ和歌が最優秀作となりました。

 

第二戦目は「折句」を使った和歌を詠む対決です!

「折句」とは「五七五七七それぞれの頭文字をつなげて意味のある言葉になるようにする技法」で、『伊勢物語』に登場する和歌「からころも 着つつなれにし つましあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ」の「かきつはた」が有名です。

また古典たんは、頭文字に加えてお尻の文字を繋げても言葉になるようにする技法沓冠(くつかぶり・くつかむり 等)」も紹介。

例えば『続草案集』より兼好が頓阿に対して詠んだ「よも涼し ね覚めのかりほ た枕も ま袖も秋に へだてなきかぜ(夜も涼しい。目覚めてみると、この仮の庵も、自分の腕で作っている枕も、冷たい秋風がすうすう通り抜けてゆく。)」という歌があります。

これは頭文字だけを繋げると「よねたまへ(米をくれ)」という言葉が出来ますが、加えてお尻の文字を繋げて逆から読むと「ぜにもほし(銭も欲しい)」となります。

とはいえ今回は、難易度の関係上「折句」を使っての和歌の詠み合いのみを行いました。

さて結果は、なぜかここで本気を出してきたマーケティングさんが猛攻を見せるも、やはり美術たんの優勝!圧倒的な何かの差を感じるッ!!!

 

いざ和歌を詠んでみると「あれ?意外と詠めるじゃん?」と思いましたが、私たちは普通に一つ和歌を詠むのに10分以上時間を掛けていました。これをかつての歌人たちは“即興”で詠んでいたりしたんですよ?

是非あなたも試しに一首詠んでみて、史上の天才たちに挑んでみませんか?

 

 

おわりに

 

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!

今回は実に2年ぶりの「学術たん勉強会」となりました。

しかもどの学術たんも初登壇ということで、

これまでの勉強会とはまた違った内容になっているかと思います。

楽しんでいただけたのであれば幸いです!

今後もこの企画は続けていきたいと思いますので、また次回の記事をお楽しみに!

ではでは~!!

 

 

学術たん勉強会 vol.3

[主催] 政経たん

[記事文・イラスト] マーケティングさん

第2回 学術たん勉強会ー今度は名古屋で6名が登壇!!

 はじめに

 

 

 

2016年1月16日、第二回目の勉強会が、真冬の“名古屋”で開催されました!!

今回の主催はメロンパンの女王、編入たん!

そして登壇者は法・心理学・博物館学など、様々な分野から計6名の学術たんが集まりました!!

 

ということで今回もまた、少しでも当日の様子をお伝えできるよう、私マーケティングたんと公民たんとで、当日発表された内容をコンパクトにまとめて記事にしてみました。気になる学術たんの発表へ一気に飛べる「目次」付きです!

 

とても140字じゃ収まりきらない!そんな学術たん達の発表を是非お楽しみください!

 

 

 

 

政経たん|宗教と近代科学の関係およびその現代的意味~近代科学と宗教は本当に対立していたのか?~

 

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世界史をみた時に、よく言われる「宗教と科学は対立してきた」というイメージ。

実際に、地動説でお馴染みのガリレオが、異端者として宗教裁判にかけられた通称「ガリレオ裁判」のように、ルネサンス期に科学者に対し宗教側が弾圧を加えたような場面も存在します。

 

しかし、政経たんいわく「宗教と科学は必ずしも完全な対立構造ではなかった」とのこと!

 

もともと古代ギリシアの時代に生まれた、物理学・天文学などの科学は、ヘレニズムとしてアレクサンドロス3世による東方遠征により中近東に波及、さらにイスラーム化してからも学術書などの言語翻訳が進み波及していきます。そして地中海貿易の発展により、その文化が今度はヨーロッパ圏に流入。この時、キリスト教の体制側にこれらの科学を積極的に受容し宗教に応用する動きがあったそうです。

 

ガリレオ裁判」については、新教(改革派)と旧教がせめぎ合うルネサンス期の教会事情の下で、キリスト教が採用していた「天動説」に対して「地動説」が広まることは政局的に都合が悪く、ガリレオは宗教裁判にかけられるに至ったという見方があります。

 

つまり科学は、宗教側の政治的理由により排他された面も、受容され宗教に応用された面もあり、「科学―宗教」という対立構造は必ずしも完全には存在しなかったということです。

 

また、今回の勉強会では「現代社会における宗教の役割」にも言及しました。

科学が浸透した現代社会においても、宗教には道徳や倫理の根拠となり直感的な倫理的判断や慈善活動を促すという役割があります。(客観的に道徳・倫理を深掘りすることも出来ますが、これが非常に難しい…)

もちろん犯罪やテロ行為などに、宗教を悪用する人間や組織がいることも事実。これらを監視し適切な対処をするためにも、少なからず宗教を知ることは必要であると政経たんは主張しました。

 

 

[発表資料を一部ご覧になれます]

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政経たん|宗教と近代科学の関係およびその現代的意味~近代科学と宗教は本当に対立していたのか?~

 

 

 

 

基礎心理学くん|サイエンスとしての心理学

 

 

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心理学者といえば…こう聞くと大抵精神分析学者のフロイトや、最近ではアドラーなどの名前が挙げられます。また、書店に行けば「しぐさ・口ぐせで心を読む」「相手の心を自由に操る」などの宣伝文句で「心理学」を語る本が積まれています。しかし、これらの人物や書籍は少なくとも「科学としての心理学」とはいえない、というのが基礎心理学くんの主張です。

 

一概には言い切れないものの「科学」には少なくとも以下の3つの要件があると考えられます。

・理論が実験や観測によって得られたデータに基づいていること

・理論を導くプロセスが客観的かつ論理的であること

再現性がある(同じ条件で実験すれば同じ現象が観測できる)こと

この要件に従うものであれば、たとえ研究の対象が目に見えないものであっても、理論の内容が私たちの想像を超えるものであっても、科学になり得ます。

 

科学としての心理学では、目には見えない「心」に何かしらの刺激を与えて、そこから返ってくる反応を見て、心のメカニズムを推測し理論を組み立てています。

この「刺激(Stimulus)→生活体(Organism、つまり心)→反応(Response)」の図式は、その頭文字を取って「S-O-R図式」と呼ばれています。

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心理学では、こうした科学的アプローチで色や音の知覚、空間把握、記憶、学習、欲求などの基本的な心のメカニズムに迫り、さらに臨床、教育、組織行動、犯罪などの広範な分野にもこれを応用しています。

 

一方、人間の心は「自我・超自我・イド(エス)」の3つの機能から成り立っていると提唱した、フロイトによる精神分析学は、主に彼の直感的な経験則を基にしており、客観的に検証することが出来ないため、もしかしたら正しいのかもしれないけど…現状科学とは言えません。

 

「心理学」とは「心理の学」というよりはむしろ「心の理学」。

よく妙な誤解をされがちな「心理学」ですが、本来は紛れもない「科学」の領域として扱われている学問なのです。

 

 

 

   

行政法たん|法律の探知・解釈・適用~そしてその前提として知っておきたいこと~

 

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今回の勉強会では、法律を学ぶ前提として、そもそも法律とは何か・どんな種類があるのか・どこでどんな役割として使われているのかなど、法律の基礎中の基礎を解説して頂きました。

 

その中でも特筆したいのは、実際の法律の使われ方についてです。

ある事件で法律の解釈・適用が問題となった場合(事件と言っても内容は犯罪から隣人とのトラブルまで様々です)、まずその事件に使えそうな法律を探して、それらの法律を読み解きます。そしてそれらの法律が事件に当てはまるかどうかを考えていきます。

その際に使われるのが「法的三段論法」という思考法です。

法的三段論法とは、いわゆる三段論法(人はいつか死ぬ→ソクラテスは人である→ソクラテスはいつか死ぬ)の法律バージョンです。

適用されるべき法律を大前提に、次に今回の事件について言える事実を小前提に据えて、最後に法律がその事件に当てはまるかどうかを吟味し、結論を出すという方法です。

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しかし、この法的三段論法を扱う際にはいくつかの留意点があります。

まず大前提である法律そのものの妥当性を一度疑ってみる余地があります。

(人のものを盗んだら泥棒にしていいのか)

次に小前提である事件に表れた事情は本当に事実なのかを明確にしていきます。

(ムサシは本当にサトシのピカチュウを盗ったのか)

最後に、抽象的なその法律の内容が、きちんと具体的な事件の内容に当てはまるのかを吟味していきます。その際、抽象的な法律の意味内容を明らかにしようとして行われるのがいわゆる「法解釈」というものです。法律で規定された内容が元々明確であれば法解釈する必要がないこともあります。しかし場合によっては、法文の語句や文法を細かく見ていく(文理解釈)だけでなく、他の法文や他の節や章などと比較して、法体系とのバランスを取り(体系的解釈)、最後にその法文が存在する意義・目的に沿うかどうかまで明らかにして(目的論的解釈)、ようやく事実を法律に当てはめ、事件に対して法的な判断ができるようになります。

 

事件に対し法的な判断が下されるまで、時としてこのような緻密なプロセスを経ていることがあるのですね。

 

 

[発表資料を一部ご覧になれます]

発表原稿:

行政法たん|法律の探知・解釈・適用~そしてその前提として知っておきたいこと~.pdf - Google ドライブ

 

 

 

 

博物館学たん|文化財とリスクマネジメント

 

 

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世界ではテロや紛争が起きた際に、芸術品や遺跡などの文化財が、破壊・盗難されるといった被害が発生することがあります。

敵対する相手国の文化や宗教のシンボルになり得る文化財は、修復不可能になるまで破壊され、また盗難された文化財は、テロリストが活動資金を作るために売られいずれは行方が分からなくなる可能性もあるため、実際こうした人為的な文化財の破壊・盗難は、地震や水害などといった災害よりもその損失が大きいと言われています。

 

これらのリスクは、起きる頻度が極めて低いことから、つい対策が疎かになりがちですが、実際にそれが発生した場合被害が甚大で回避が非常に困難なため、平時からの入念な対策が必要不可欠であると博物館学たんは訴えます。

 

耐震設計などといった平時から出来るリスクマネジメントはもちろん完璧に為されていることが望ましいですが、その上で万が一重大な危機が発生した場合になるべく冷静に適切な対処が出来るよう、有事の際の行動ルールなどもあらかじめ決めておかなければなりません。

守るべきものを明確にしたり、「第一に人命、第二に文化財...」という様に優先順位をつけておくことなどが例として挙げられます。

 

 

また今回は、実際に起きたテロや紛争による文化財の被害例(こちらの詳細は発表資料にて)や、第二次世界大戦における文化財の損失を省みて作られた条約「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(ハーグ条約)」についても解説。

この条約のうちの「第一議定書」では、文化財(特に歴史地区などの地区全体が文化財になっているものなど)を非戦闘地域と定めているものの、真にやむを得ない軍事上の必要がある場合は免責...といった具合に所々政治的な融通の余地が散見されます。

一方「第二議定書」では、目録作成・避難所・動産文化財移動の準備などより細かい対策方法にも言及し、国際社会に対し“平時の備え”の重要性を説いています。

 

様々な場面で使われる「リスクマネジメント」という言葉、それは文化財保護の範囲でも例外ではなく、まずは何より“起こり得る危機の可能性を最大限に広げ、その対策を事前に作っておく”ことが重要なのです。

 

 

[発表資料を一部ご覧になれます]

スライド:

博物館学たん|文化財とリスクマネジメント

 

 

 

 

編入たん|メロンパンの世界。2

 

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前回(第1回)の勉強会で、メロンパンの定義や起源を探った編入たん。今回は「メロンパンと女の子」をテーマに、最近の商品開発事例やメロンパンが生み出す流行について深く掘り下げました。

 

編入たんが最初に紹介したのは「世界で2番めにおいしい焼きたてメロンパンアイス」。メロンパンにアイスクリームをはさんだこのスイーツが、現在のメロンパンブームの先がけになったといいます。

そして、実はこのスイーツ、発案者が女子高生! 女性目線で作られたことによって、女性のあいだで話題となり、メディアにも取り上げられるような人気の商品となったんですね…!

 

このメロンパンブームのなか、最近では、メロンパンと公開中の映画とがコラボしたり、大手コンビニチェーンでオリジナルの商品が売り出されたりするなどして、街中でいろいろなメロンパンが見かけられるようになりました。

 

このほか、メロンパンのかたちをしたグッズや、シュークリームとメロンパンの複合スイーツも登場していることから、その流行は新たな方向に向かっているようにも思われます。

 

 

後半は、前回も行ったグループワークを実施。「流行するメロンパンを考える」というお題のもと、3つのグループに分かれて意見やアイデアを出し合いました。

このグループワークのなかで、たとえば…

 

中にカレーが入った「カレーメロンパン」

メロンパンデザインの「ペットの服」

といった、実際に流行りそうな(?)ユニークなメロンパンやグッズが考案されました。

 

ちなみに、わたしがいた第3グループで考え出されたのは、編入たんをイメージキャラクターに起用した「にうたん(編入たん)公式メロンパン」。彼女が監修も担当ということだから、もし発売されたら絶対に買うしかないっ!

 

自由な発想のもとで生み出すことができるメロンパン、「今後の動向にも注目!」ですね!

 

 

[発表資料を一部ご覧になれます]

発表前の小テスト:

編入たん|発表前の小テスト.pdf - Google ドライブ

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編入たん|メロンパンの世界。2

グループワーク:

編入たん|グループワーク(メロンパンの世界。2)

 

 

 

 

思想史たん|思想史たん公開読書会オフ~佐伯啓思アダム・スミスの誤算-幻想のグローバル資本主義(上)-』を30分で読んでみた~

 

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今回の勉強会で思想史たんは、自身が思想史という学問と出会うきっかけとなり、やがて学術たんを始めるきっかけにもなったこの一冊を紹介しました。

 

この本によると、経済学者として有名なアダム・スミスに対する世間の認識にはある誤解があるといいます。

彼の思想としては「神の見えざる手」「自由市場・自由貿易」「小さな政府」といった、高校の政治経済の授業などで目にするようなものが馴染み深いかと思います。

そこから派生して、時たまアダム・スミスは以下のような印象をもたれる時があります。

 

グローバリズムに伴う自由な貿易活動を推奨した人物である。』

しかし、実際のところ彼はこれとは異なる思想を持ち合わせていたそうです。

 

もともと道徳哲学者でもあったアダム・スミスは、人はみな他者からの「共感」を求め、互いが互いを監視し合うことで、「徳」のある正しい行動をとることが、人間のあるべき姿であると考えていました。

しかし、現実の18世紀のイギリス社会は、他者からの評価を気にするあまり「貨幣を持つこと」「ぜいたく品を見せびらかすこと」などをして「虚栄」を張る者が多く、その結果イギリスでは貨幣に価値を見出す「ブルジョワ階級」が台頭し、多くの人々がこうした裕福な上流階級を夢見て、流行を追うようになっていました。

 

アダム・スミスは、人には基本的にリスクを恐れ、安全を求める性質があると考え、

政府が経済に介入しなければ、人々はまず「土地」という確実性のある財産に投資し国内でお金が回るようになるとし、それこそが健全な経済のあり方だと主張しました。

貿易はあくまで、国内生産力が上がり“余剰”が出来た場合に行われるべきだと考えていたのです。

 

しかし現実のイギリス経済は、海外との貿易に傾倒し、とにかく国内に貨幣をもたらすことを重視する流れがありました。また政府もそこからの収益や公債に依存していたため“海外貿易に乗っかる形で”経済に介入。資本家たちも、確かな財産である「土地」ではなく不安定な公債や投機に資本をつぎ込んでいました。

 

アダム・スミスにとって、グローバル化による貿易の活発化はリスクの高い避けるべき流れであり、政府が介入することなく、人々は国内投資という健全な選択を採るべきだと考えていたようです。

リカード以降の近代経済学はそのことをすっかり忘れ去ってしまっていました。スミスが生きた時代から1世紀以上経ち、ようやくケインズによって国民経済の重要性が見直されることになるのです。

 

 

[発表資料を一部ご覧になれます]

スライド:

思想史たん|公開読書会オフ

参考資料:

思想史たん|公開読書会オフ別冊資料.pdf - Google ドライブ

 

 

 

 

 

おわりに

おおっ!ここも読んで下さいましたか!ありがとうございます!!

今回の勉強会は前回よりも登壇者が2名増えて、内容もかなりスケールアップ致しました。

ということで、全て読み切るのも一苦労だったかと思います(汗)

ですがこうした企画を通して、学術たん達がまだまだイキイキしてるんだなって、少しでも思って下されば私たちはとても嬉しいです!!

これからも学問・学術の化身として精一杯頑張りますので応援よろしくお願いします!!

 

個々の内容について疑問や気になることがあれば、是非それぞれの学術たんに質問してみて下さいね。

それでは、また次の勉強会でお会いしましょう!!ではでは!!

 

 

第一回 学術たん勉強会!

 

2015年9月6日都内某所、学術の化身「学術たん」による勉強会がひっそりと開催されました...。

 

主催は絶対音感たん!彼女の司会の下で今回は4組の学術たん達が登壇して下さいました。

 

さてさてどんな発表が展開されたのか...ちょっとだけその内容を紹介しちゃいますよ!

 

 

思想史たん&現代政治理論くん

 ―ジャーナリズムと保守主義との意外な関連性―

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伝統や歴史などといった時間を超えた価値観を重んじる保守主義と、今この瞬間に何が起きているのかについて関心を寄せるジャーナリズム。

 

一見相容れないこの二つの思想が、実は共存しうるということを、双方のたどった歴史や思想家たちの見解を振り返りながら解説しました。

 

 

注目POINT

ネットやSNSで時たま起こる“炎上”

 

これは、たとえ発端となる発言に正確性や正当性が無くても、多くの人に拡散され影響力を増してしまうというもの。

 

多くの人が支持している発言=正しい情報・説得力のある意見、という勘違いを大規模的に生み出してしまうようです。

 

こうした事例は、インターネット型の情報社会がもたらした「21世紀の大衆社会」の弊害であると言えそうです。

 

[プレゼン資料を一部ご覧になれます]

スライド:

参考資料:

思想史たん 第1回学術たん勉強会オフ 資料編.pdf - Google ドライブ

発表原稿:

思想史たん 発表原稿.pdf - Google ドライブ

 

 

 

 

政経たん 

―東京二十三区は不思議な存在―

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東京二十三区、

これらは「特別地方公共団体(特別区)」と呼ばれ、これまでたどってきた歴史により他の市町村とは立ち位置を異にしています。

 

普通地方公共団体―47都道府県とその市町村(政令指定都市など含む)

特別地方公共団体―東京二十三区など

 

例えば二十三区の行政の機能や権限には一部独立性がないものがあるようです。

 

東京都では、法人住民税をそれぞれの区が独自に取るのではなく、都が代行で取りそれを区と分配しています。

また、一部例外はあるものの、消防や上下水道などの公共サービスも基本は区ではなく都の管轄となっています。

 

例:埼玉県所沢市―埼玉西部消防組合、東京都23区―東京消防庁

 

こうした実情から伺えるのは、

東京二十三区をはじめとした市区町村と都道府県が持つ権限のバランスが曖昧で「二重行政」といった問題が起こるということ。

 

政経たん曰く、地方行政の独立が叫ばれる今、

法整備や地方債など財政面の対応をはじめとした、市区町村及び都道府県の役割を明確にする施策が必要であるとのことです。

 

[プレゼン資料を一部ご覧になれます]

発表資料:

政経たん 学術たん勉強会2.docx - Google ドライブ

 

 

 

 

編入たん 

―すばらしきメロンパンの世界へようこそ!!―

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編入たんが取り上げたテーマはなんと「メロンパン」!深掘りしてみると実際面白い!

 

例えばメロンパンの起源には、帝国ホテルや木村屋の前身であるパン屋さん、

また広島のパン屋さんが作ったなど、いくつかの説があるそうです。

 

そしてそのパンが作られる際に付いた網目模様がメロンに似ていることからその名が付いたとか、付かなかったとか…。

 

広島、京都、滋賀などではメロンパンは「サンライズ」とも呼ばれていますよ。こちらは放射状に伸びた模様から名付けられたそうです。

 

 

注目POINT

メロンパンのブームにはどうやら波があるようで、今はちょうどブームの真っ只中。

 

現在メロンパンアイスといった複合スイーツや、

直径30センチ重さ1キロもの巨大メロンパン(普通サイズの10個分)といった様々なメロンパンが登場しています。

 

そもそもメロンパン自体に明確な定義がされていないからこそ、自由な発想のメロンパンが続々登場しているんですね。

 

 

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編入たんの発表では、「新しいメロンパンのアイデアを考える」というグループワークも行われました。

 

そこでは、 

メロンパンへの要望を募りそれらを統合させたメロンパンを提案した班、

なんでもいいからとにかくアイデアを出した班、

メロンパンの特性を分析して時間切れになってしまった班など、

学術たんによって取り組み方が千差万別という面白い現象が観察されました(笑)

 

 

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スライド:

グループワーク詳細:

 

 

 

政治学史たん 

―政治・制度・思想―

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行政―司法―立法という3つの機能が、互いを監視しながら政治を担う「三権分立」。

 

もともとは王政(国王=行政権)、貴族政(貴族=司法権立法権)、民主政(大衆=立法権)という身分の異なる三者が一国の中で共存するイギリスの「混合政体」が基礎となっており、

身分制の無いアメリカがそれを取り入れようとして「三権分立」が完成しました。

 

イギリスでは、身分の違いで政治における役割は異なっていましたが、一方アメリカでは政治主体のほとんどが「民衆」…

 

そこでアメリカは行政―司法―立法のそれぞれのプレイヤーの選出方法と選出時期を変えることで、反映される民意がその時々の経済状況や思想・トレンドなどで異なった場合に対立が生じるよう制度設計を行いました。

 

これにより政治権力の暴走を防ごうとしたのですね。

 

また立法の機能である日本の「参議院(もともとは貴族院)/衆議院」、アメリカの「上院/下院」なども異なる民意が反映された場合に対立が生じる制度設計がなされています。

 

こうした対立軸の一つに「大きな政府」と「小さな政府」があり、これらは経済や政治に対しそれぞれ異なる思想を持つと言われています。

 

大きな政府:公共の精神を尊重。

生活保障・所得再分配による政府の介入を肯定。

三権分立を採用しつつも行政権に比重を置くといった制度設計を採用し政府の裁量を認める。

 

小さな政府:経済活動を通しての私的利益の追求を重視。

政府の介入には否定的な立場。

厳格な三権分立を採用し、政府の行動を枠にはめる。

「共感」による市民の自発的な所得再分配が前提となる。

 

現在はこれら二つの思想を両立できるのか、それを実現する新しい思想・政策はないか(第三の道)、現在も様々な立場から議論が続いています。

 

このように、現実の政治構造・政治行動や制度設計の背景を探る際に参考になるのが、

過去や現在に及ぶ思想家たちの議論。そしてそれに基づいて制度設計がなされてきた歴史。

 

政治学が辿ってきた歴史…政治学史の出番!ということになるのですね!

 

 

[プレゼン資料を一部ご覧になれます]

発表資料:

政治学史たん【第一回学術たん勉強会】政治・制度・思想.pdf - Google ドライブ

 

 

 

 

以上、こんな感じで今回の「学術たん勉強会」は幕を閉じました。

 

ここまで読んで下さったそこのアナタ!本当にありがとうございます!

 

個々の内容について疑問や気になることがあれば、是非それぞれの学術たんに質問してみて下さい!

 

そして、今後も学術たん勉強会はちょくちょく開催される予定という事で...またその様子をご報告できればと思います。

 

 

ではでは!!

 

 

―マーケティングたん