学術たん、勉強会をひらく。

学術たんが世界のどこかで行っている、勉強会の様子をちょっとだけご紹介します!

第3回 久しぶりの「学術たん勉強会」です!

はじめに

2018年2月、前回から実に2年ぶりの学術たん勉強会が都内某所で開催されました!!

今回の主催は政経たん

そして登壇者には政治学たんマーケティングさん美術たん古典たんという計4名の学術たんが集まりました!!

 

ということで、今回も当日発表された内容をコンパクトにまとめて記事にしてみました。気になる学術たんの発表へ一気に飛べる「目次」付きです!

 

とても1ツイートじゃ収まりきらない!そんな学術たん達の発表を是非お楽しみください!

 

 

 

政治学たん|分類という哲学 ―既存のルールを排して学問・学術を再分類してみよう―

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専門分野を勉強・研究することは、物事に対する特定の見方を訓練すること。

つまり自分の専門分野ばかりにこだわり過ぎると、どんどん視野が狭くなってしまう可能性があります。そのため自分の専門分野を学ぶ一方で、他の分野についても「物の見方・概論を知る」くらいには学んでみることが重要であると政治学たんは述べます。

 

そこで今回はそのきっかけ作りとして、参加メンバーがそれぞれ過去に学んだ科目の名前を全てカードに書き出し、それらを川喜田二郎氏の考案した「KJ法」をベースにしながら「ちょっと変わったルール」での分類・グループ化を行ってみました。

そのルールとは以下の2つの分類法を禁止すること!

1 〇〇語 ××入門 △△演習など、大学の科目システム・シラバスで採用される分類法

2 日本十進分類法(こちらが一般的な学問分類法に該当する)

例えば、「フランス語や中国語は『語学系』で」といった分類を今回してはいけません!

しかしこの縛りを追加することで、何か新しい発見が出来るかも知れません。

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…ですが、分類作業は思ったよりも難航。

いかに我々が上記2つの分類法に「支配されているか」を思い知らされました。

 

そして散々悩んだ末に「科目名の文字数で分類してみてはどうか」というアイデアがふと出ました。早速文字数で分類してみると…。

二文字のものは哲学、文学、数学、民法など。

三文字は政治学社会学、心理学など。

文字数が少ないものほど明治以来の古き良き科目名が並ぶことが分かります!

そして四文字を超えると社会思想などやや専門・各論化。

六文字を超えてくると入門や概論、演習といった言葉が後ろにつきやすくなります。

全体的な傾向として、科目名が長くなると「一般・概論から専門・各論へ」また「伝統的なものからチャレンジングものへ」という大きなベクトルを見出すことができました。

 

そしてさらに「科目名が長いほど“ゆるふわ”な授業が多くない?」という指摘も。

確かにカタカナやひらがなを多く含んでいたり、考えてみれば不必要かもしれないキーワードが混じっているなど、極端に長い科目名は明らかにゆるふわな雰囲気をまとわせています。

そして、その科目を受けた人たちの話を聞いてみることでそれらを「中身もゆるふわ(楽単)だった」「実は本格的だった」という2タイプにさらに分類することもできました。

 

分類し名前を与えることはカオスに秩序を与え認識をもたらす有効な方法です。

つまり私たちは日常生活において既存の分類法を無条件に採用することで、物事の認知に費やすエネルギーや時間を節約できているのです。

しかしその分類によって削ぎ落され見えなくなる部分も同時に出てきます

そこで敢えて既存の分類法を禁止してみることで、私たちはカオスに頭を悩ませることになりますが、そこから新しくまた有益な発見が出来るかもしれないのです。

 

とにかく、特定の学問・学術に特化してきた「学術たん」がいかに自らの専門分野に縛られていたか…大いに気付かされた貴重な経験でした。

 

 

マーケティングさん|大物YouTuber炎上するも損をせず生き続ける

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マーケティングさんは、現代社会ですっかりお馴染みになってしまった事象「炎上(うち主に個人が起こすもの)」について発表を行いました。その主題はズバリ「炎上が起きても、別に当事者は損をしないのでは」というもの。

 

そうはいっても不倫騒動で芸能界から追いやられかけた女性タレントや、暴言問題で国民に見限られた政治家、後輩に暴行し角界から姿を消した元横綱など、炎上によって人生を狂わされた人たちは確かに存在します。

 

しかしその一方で、個人レベルで大きく炎上したにも関わらず、結果的に大して手痛いダメージを負わなかった人たちもいます。

 

その好例が「YouTuber」です。

例えば人気YouTuberの「はじめしゃちょー」氏は、2017年3月に女性YouTuberや一般女性と三股を掛けていたことが発覚し炎上。さらに同月のうちにゴルフグラブを折る動画を投稿し、そのメーカーが公式Twitterで苦言を呈したことで再び炎上を起こしてしまいました。

また「ヒカル」氏というYouTuberも、2017年8月に「VALU」というサービスを利用して、自身のフォロワーに株行の購入を煽り、一斉に株式が買われ売値が高騰したところで、一気に売却し利益を得たことで「詐欺疑惑」がかかり炎上をひき起こしました。それを受け翌月には無期限の活動休止を宣言したものの、2か月後にはあっさり復帰し現在も活動を続けています。

 

さてこの2人のYouTuberについて月毎の「チャンネル登録者純増減数」を見てみると面白いことが分かります。

確かに彼らが炎上した翌月にはその数が激減し、ヒカル氏に至ってはマイナスの数値を記録していることが分かります。しかしなんと、翌月以降になると徐々にその数値は回復傾向を見せてきているのです。つまり炎上を経験してもなお、彼らの動画は見られ続け、ファンもつき、彼らは継続して収益を得ていることになるのです。

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なぜ、YouTuberは炎上により手痛いダメージを負わなかったのか。

考えられる理由として、炎上の持つ特性があります。

まず「非好意的な口コミは、好意的な口コミの2倍以上のスピードで伝播する」グッドマンの第二法則というものがあります。すなわち炎上は「良い口コミ」よりも拡散力が高いため、結果2人の知名度を格段に上昇させたのです。炎上により初めてその存在を知り、ファンにはならないまでも興味本位で動画を視聴した人が当時多く居たのではないでしょうか。

そして炎上は結局一時的なもので、炎上に加担していた人が飽きたり別の話題で盛り上がるようになれば、世間はその炎上騒動のことは忘れ、ファンだけが残る状態に落ち着きます。

つまり、炎上が起きても「心折れずに活動を続ければ」状況は意外にも簡単に改善するのです。

 

ですが、芸能人やスポーツ選手・政治家は残念ながらYouTuberのようにはなかなかなれません。

なぜなら彼らは、自分の活動や進退を、事務所や団体・国民などの第三者に握られているからです。その一方で、独立性の高いタレントやネットアイドルであれば、炎上による被害を比較的受けず、場合によって炎上を利用することだってできます。

 

そもそもネットという環境は目立ってなんぼの“超”競争市場です。

YouTubeに限らず、どこかの生放送で過激な配信者が増えるのは、炎上でも起こさないと見向きもされないからです。

この問題に対しては、正直なところ動画サイトやSNSの運営側が炎上目的の行動をユーザーに起こさせないためのルールおよびシステム作りをする他に解決策はないと思われます。

最近では樹海で遺体を撮影した外国人YouTuberが炎上したことで、YouTube側も新規制を発表するなどの対応を見せています。

果たして「炎上」が死語になる未来はくるのか?今後の展開を静観していきましょう。

 

 

美術たん|味わうほどに深い!「象徴主義」の作品を鑑賞してみよう

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三人目の登壇者は美術たん!

今回、美術たんは19世紀後半に興った芸術思潮「象徴主義」について解説。

また関連する絵画や詩を鑑賞し、参加者に感想を書いてもらうというワークショップも行いました。

 

美術たん曰く「象徴主義」は、「写実から抽象的絵画へ」という発展的美術史観から外れたところにある、いわゆる歴史の闇にうずめられてしまった芸術思潮であるとのこと。しかし、そこには蠱惑的な独自の魅力があるそうです。

 

象徴主義の基本的なコンセプトは「現実の写実的な描写ではなく、人間の内的な世界を何らかの象徴的なイメージで表現しよう」というもの。

「真実の世界とは、目には見えない現実の向こう側あるいは裏側に、すなわち人間の内面にこそある」という考えのもと、象徴主義の画家たちは自身の心を深く掘り下げ、また聖書や有名な作家による文学などの世界観を盛り込みながら、「人間の内的な世界」を描いてきました。

 

発表の中で、ボードレールの象徴派の詩を、参加していた学術たん全員が順番に音読していくという、印象的な場面がありました。そうした詩の音読が今回の美術たんの発表に取り入れられた理由は、「象徴派の詩は、読み手の脳内に喚起されるビジュアル的なイマジネーションを重視しているから」なのだそうです。象徴派の画家もまた詩人のように、目には見えないけれど脳裏に見える、想像力を重んじていたのです。

 

今回美術たんがメインに紹介した象徴主義の画家が、「オディロン・ルドン」と「ギュスターヴ・モロー」です。

 

ルドンは「眼は奇妙な気球のように無限に向かう」「不思議な花(子供の顔をした花)」など、主にモノクロで人の頭部のパーツをモチーフとして組み込んだ作風でよく知られています。

当時色彩豊かに風景や人々の生活を写実的に描いていた印象派の画家が多い中、ルドンは自身の心・過去・無意識の世界を追求し絵画を描き続けました。

 

またモローは「オイディプススフィンクス」「出現」など神話や聖書を基にした作品を多く描いています。しかしそこには当時の世相も反映した「女と男の心情」や「生と死」など何らかのテーマを感じさせる描写が多く含まれており、神秘的でありながらかつ深い精神性も持ち合わせる作風が当時高く評価されていました。

 

今回行ったワークショップにおいても「鑑賞した絵画や詩から皆さんがどんなことを感じとるか」という、見たままの説明やキレイな模範解答などではなくそれぞれの抱く素直な所感を美術たんは重視していました。当然学術たんによって得意・不得意が出ていましたよ!

ですがこうした美術鑑賞をしてみることで、実は私たちに「すぐ正解を求めようとする」「事実ばかりに気を取られてしまう」というようなクセがついてしまっていることに気付かされます。

そんな時は美術館に行って「まずは解説を見ずに作品をじっくり鑑賞」してみるといいのかもしれませんね!

 

 

古典たん|激闘!古典たん杯~春の徴(しるし) & 折句編~

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最後の登壇者は古典たんです!

この時間では他の参加者の学術たんが、一定のルールの上で和歌を詠み、匿名での人気投票により最優秀作を決めるという「古典たん杯」が開催されました。

 

第一戦目は清少納言の『枕草子』のある一節から出題。

2月末のまだ雪が少し降っている日に、藤原公任から「すこし春あるここちこそすれ(春が来ている心地がするよ)」というメッセージが届きます。これは「この七七に上の句を付けろ」という意味であり、それに困惑する清少納言でしたが「空寒み花にまがへて散る雪に(空寒く花に見まがう雪を見て)」という上の句を返したというお話があります。

まずはそれにちなんで、少し現代テイストに言い換えた「少し春めくそんな気がする」という下の句に適する上の句を付けるというルールで和歌を詠み合いました。

政治学たんとマーケティングさんがネタに走る中、見事美術たんの詠んだ和歌が最優秀作となりました。

 

第二戦目は「折句」を使った和歌を詠む対決です!

「折句」とは「五七五七七それぞれの頭文字をつなげて意味のある言葉になるようにする技法」で、『伊勢物語』に登場する和歌「からころも 着つつなれにし つましあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ」の「かきつはた」が有名です。

また古典たんは、頭文字に加えてお尻の文字を繋げても言葉になるようにする技法沓冠(くつかぶり・くつかむり 等)」も紹介。

例えば『続草案集』より兼好が頓阿に対して詠んだ「よも涼し ね覚めのかりほ た枕も ま袖も秋に へだてなきかぜ(夜も涼しい。目覚めてみると、この仮の庵も、自分の腕で作っている枕も、冷たい秋風がすうすう通り抜けてゆく。)」という歌があります。

これは頭文字だけを繋げると「よねたまへ(米をくれ)」という言葉が出来ますが、加えてお尻の文字を繋げて逆から読むと「ぜにもほし(銭も欲しい)」となります。

とはいえ今回は、難易度の関係上「折句」を使っての和歌の詠み合いのみを行いました。

さて結果は、なぜかここで本気を出してきたマーケティングさんが猛攻を見せるも、やはり美術たんの優勝!圧倒的な何かの差を感じるッ!!!

 

いざ和歌を詠んでみると「あれ?意外と詠めるじゃん?」と思いましたが、私たちは普通に一つ和歌を詠むのに10分以上時間を掛けていました。これをかつての歌人たちは“即興”で詠んでいたりしたんですよ?

是非あなたも試しに一首詠んでみて、史上の天才たちに挑んでみませんか?

 

 

おわりに

 

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!

今回は実に2年ぶりの「学術たん勉強会」となりました。

しかもどの学術たんも初登壇ということで、

これまでの勉強会とはまた違った内容になっているかと思います。

楽しんでいただけたのであれば幸いです!

今後もこの企画は続けていきたいと思いますので、また次回の記事をお楽しみに!

ではでは~!!

 

 

学術たん勉強会 vol.3

[主催] 政経たん

[記事文・イラスト] マーケティングさん